【改革の歩み—第25話】
柔整業界の明るい未来


 

  こんにちは。  公益社団法人東京都柔道整復師会会長の工藤鉄男です。

  さて、今年3月の「第3回柔整療養費検討委員会」で2年連続の料金改定が行われました。その内容については、これまでのような付帯事項がつけられることもなく、十分に納得できるものと思っております。
  しかし、本来この委員会は「柔整制度」のあり方について、中長期的に検討をするために設置されたものですが、これまでの約2年間に開催された3回の委員会では、療養費の料金改定の議論に終始し、本筋の論議まで進められていません。そして現在は、我が業界に業界の存続に関わる様々な問題が隆起していますが、その背景には、「制度疲労」を起こした柔整の制度があることは間違いありません。やはり、この部分への議論を先送りしては、何の解決にもならないことは明らかです。
  昭和63年に個人契約が開始され、平成10年には柔整養成校が解禁されると、それらが互いに絡み合い、僅か四半世紀の間に業界が抱えるすべての問題、すなわち、資格者増大・不正請求・広告違反・社団組織率とモラルの低下等が生じました。これは、激動する時代の変化に、柔整制度自体が対応できなかった証左です。そして、その間隙かんげきをついた営利目的者による業界への浸食を現状の制度では止められなかったことも事実と言わざるを得ません。
  これらの問題に対し、今ほど解決へ向けた確実な実行を望まれる時はありません。そして、今こそ、何をおいても実行しなければならない最大の項目は、料金の上げ下げではなく、すべての問題の根本となる「協定の見直し」「統一審査基準の作成」、そして「卒後研修制度の確立」の3つだと考えています。

  先ず【協定の見直し】ですが、その本質となる「受領委任払い制度」が、なぜ柔整に認められたのか、その意義と経緯を振り返る必要があります。少子高齢化へ突き進む現在の日本において、どのような「協定の見直し」が必要なのかを導き出し、今の時代に適したものへと再構築する必要があります。東京都の広報誌コンパスで示したように、この25年間の柔整療養費の請求実績データからは、行き過ぎた規制緩和の弊害と、今後の受領委任に求められるあり方が、ハッキリと見えております。もはや、時代に合わせた協定の見直しが不可欠です。今後も厚労省等との対話を全力で進めてまいります。

  そして、その協定を正しく且つ確実に機能させるためには、公益社団や個人といった業界内事情や、都道府県という地域区分に関係なく、柔道整復療養費の請求すべてに共通する【統一審査基準の作成】を進めなければなりません。支払い者と請求者といった、対立軸にある2者の経済的な理由が優先する曖昧な現在の基準では、その都度右往左往ばかりして、何が問題なのかという大切な部分が不明瞭です。柔整業務の詳細をすべて知る、柔道整復師による不明瞭さを許さない基準作りと、それを営利目的には絶対に利用させない堅い決意をもった、公益性のある組織による運用にまで発展させる努力が必要です。現在その方向付けと継続的な運用を可能にする新しい仕組み作りのため、財務省や金融庁までも含め、保険者等の理解を求める交渉も頻繁に行い、その実現に向けて懸命に努力をしているところであります。

  そして、この制度を使用する柔道整復師という、国家資格者自身の倫理観を確立するために、徹底した【卒後研修制度の確立】を行い、地域の人々を笑顔にする柔整整復術の根底にある「利他」、つまり“他者の利益のため”、という原点を理解し、確実にそれを実践するための柔整教育の再構築が求められております。要するに、最後は「人」なのです。
  柔道整復師という人格を創ることは、この業界に求められる最重要課題のひとつです。業を行うために徹底した「志」を追求し、ここを放置したままで、形ばかりの制度改正では何の意味もありません。 また、国家試験合格直後に開業ができる仕組みに問題があると思っています。書物や実習から学んで国家資格を習得した後、実際に患者さんに触れて、感じ、伝え合うことをしなければ我々の手技は完成をしません。患者さんに触れる経験によって、更に高めていこうとする柔道整復師の、臨床重視の「道」を習得するには、臨床研修の期間は必須です。その間に医療にかかわる職業人・医療人としてのモラルをしっかりと構築する必要があるのです。

  最後に、当会や日本柔道整復師会をはじめ、47都道府県の柔道整復師会の多くが、この度「公益社団」を取得した今こそ、この業界を立て直す絶好の機会であります。今を逃せば、柔整業界を未来に繋げることは困難になると考えています。
  そして、それぞれの柔道整復師と各地域の接骨院が、地域住民や行政から、医療資源として必要とされなければなりません。さらに、柔道整復術を正しく行う柔整師が、きちんと評価される業界を実現しなければなりません。その先にだけ、「柔整業界の明るい未来」が見えてくるのだと考えます。この改革には、当然業界の曖昧さを正す痛みが伴う可能性があることも、重々承知の上で、さらなる皆様のご理解ご協力を賜りますよう、心よりお願いを申し上げます。