【改革の歩み—第21話】
受領委任協定再締結の必要性


 

  皆さん、こんにちは。公益社団法人東京都柔道整復師会会長の工藤鉄男です。

  既にご存知の会員もいると思いますが、去る6月23日に行われた、公益社団法人日本柔道整復師会の役員改選に於いて、会長の重職を拝命致しましたことをご報告申し上げます。この激動の時代に於いて、今後は東京都だけでなく、日本全体の「柔整業界の舵取りを行う」という重責を仰せつかりましたことを、真摯に受け止め、皆様のお力添えを賜りながら、「粉骨砕身」柔整業界改革に取り組む所存です。今後ともご理解ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
  さて、日本は正に今、急激な少子高齢化による人口構造や財政状況の変化から、財政優先の医療政策が押し進められております。医療の一端を担う我が柔整業界に於いても、国が目指す新たな社会保障の枠組みの中で、柔整は如何にあるべきかという業界のあり方が問われ、大きな変化が求められています。
  それは、国民的には増税や負担割合増という痛みを伴うものであり、その引き替えに確立する社会保障の充実に向けて、我が業界としては、施術環境や制度の現状維持を目指すようなものであってはなりません。
  これまで以上に施術や制度の裏付けを明確にするだけに留まらず、スポーツ現場や災害時の救護、高齢者への地域支援など、まだ十分に確立できていないあらゆる分野に於いて、その可能性を最大限広げ、今後の柔道整復師がそれぞれの地域に貢献し得る新たな環境をしっかりと作り上げる必要があり、そして同時に、例えどれだけの痛みを伴っても、業界自らがモラルを持ち、コンプライアンスを確立する事を使命としなければなりません。そのために、業界が何としても再構築しなければならないことが「3つ」あります。
  1つ目は、「業界秩序」です。
振り返ればこの四半世紀、社会全体がグローバル化や経済至上主義・個人主義的な考え方に流れ、柔整業界でも昭和63年に個人契約が開始されると、それまで社団が守り・担って来た業界の軸は失われ、資格者は分散し、残念ながら、医療人として何よりも守るべき秩序やモラルの低下が起こりました。こうした状況のままでは、例えどのような対応策を講じても思うような結果を示すことは叶いません。先ずは何としても業界内の意識やモラルの中心軸を、今一度、国民目線とニーズに照らし合わせて、柔整業界自らが作り直さなければいけません。そして、分散した全ての柔道整復師の意識を、もう一度同じ土俵に乗せ、業界が本来あるべき基本理念で一つにまとめあげる必要があります。
  2つ目は、「信頼関係」です。
行政や保険者とは、請求者と支払者という向かい合った視点ではなく、地域住民のため、国民利益のために何ができるのか、という同じ方向からの視点と意識を持って、実現できることを協同して作り上げる必要があります。しかし、医療に求められることは、各地域によって、対処する相手によっても、その内容は異なり、画一的なものではありません。それぞれの地域事情に向き合い、そこで暮らす人々との信頼関係、絆を強く結び直す必要があります。
  3つ目は、「伝統と改革のバランス」です。
日本の伝統医療である柔道整復は、利己を優先せず、他者の利のために貢献することで己を活かし残す、という柔道の精神を根源とし、その伝統を伝えてきました。また、独自の手技や固定法は、一子相伝的に秘伝や口伝で伝えられ、世に広く伝えるという文化を持ち合わせていない時代もありました。しかし現代は、教育も含めた施術の伝え方、また介護保険という新たな仕組みの創設がされ、業界を取り巻く環境は大きく変わってきています。こうした時代に於いて、柔整独自の伝統を守りながら、新しい時代に合った制度への移行や、未来への改革も同時に進めなければなりません。方向性の異なる施策を実現するには、そのバランス構築が必要です。以上の3つは、個々の柔道整復師では絶対に出来ないことです。今こそ日整が軸となり、時代に求められる必要な形に創り直さねばなりません。そして、それをさらに未来へ繋げるためのキーワードは、あくまでも「国民のため」の一点に集中すべきです。私益ではなく公益です。
  本来、国民のために存在する「受領委任制度」の根底にある「公益」という視点から、今一度、すべてを見直した「新協定」の締結へと昇華させ、立場や所属の違いによる思い込みや、社団か個人かといった業界内だけの偏った意見等に縛られず、また、新たな改革を好まない役人の思考をも越えて、何よりも「国民のため」の新協定を締結し、それを基準として業界に新たな軸を創り、社会保障の中での柔道整復師の位置づけを確立する必要があると考えます。
  そして、柔道整復師をよく知らない人達にも、また理解しようとしてくれる人達にも、或いは、大いなる疑問と不信感を抱いている人達にさえも、柔道整復師とその業界を正しく理解して貰うため、情報収集・分析、判断・決定・実行を素早く行い、それを社会に正確な情報発信と共有化を確実に進めます。
  最後に、確かな知識・技術、そして誇り、さらには、公益というモラルを備えた柔道整復師が各地域で施術にあたり、社会に貢献できる仕組みの構築を実現したいと思います。
  皆様のご理解とご協力を賜りますよう、重ねて心よりお願い申し上げます。